その生命は、さらなる進化を求めて動き始めた・・・。 

バイカル湖の真ん中に、オリホン島がある。リーはその辺りの水面に、ある植物の部分を見つけた。銀色に輝く様子は自然のものではなさそうだ。ギガ・ジガと同じ組成だろうか。島から南下するにつれ、水面に浮いているその数は増えた。

湖の水は、アンガラ川という大きな川を流れ、北極海にそそぐ。汚れきった湖の水はアンガラ川へ近づくと透明度を取り戻しつつあった。彼女は銀色の植物─シルバーリードが川に向かうほど増えることから、メカフィッシュもアンガラ川へ移動しているのではないかと考えた。

リーはアンガラ川へ赴いた。彼女の目に不思議な景色が飛び込んできた。薄汚れた川の底のほうが銀色に輝いている。それがシルバーリードである事に気づくのに、それ程時間はかからなかった。

群生しているシルバーリードの間を行き交う細長い影があった。メカフィッシュだ。新種に違いない。植物の根元には、じっとしているものもいる。これも同じ種類だ。彼女は新しい魚の発見に驚きもせず、早速新種を数十匹採取した。採取できたのは魚だけではなかった。彼女の容器には十数個の小さな宝石のような玉も転がっていた。


KYNAのネットワークは日増しに組織的なものになった。政府のマークをおそれたリーは KYNAのバックアップを得て、中国の満州里にプライベートの研究所を構えた。ここからはバイカル湖へはそう遠くない。驚くほど交通手段は発達しているのだ。

そして、その研究所にパッファークロームというメカフィッシュが北海道の仲間から届いた。以前彼が捕獲に失敗した魚のようだ。日本の国家機関の生物研究所から入手したということだった。

リーはそのサンプルを遠心分離器にかけ、ある物質を抽出した。それはレドキシンという物質で、赤錆び病の治療に威力を発揮することになる。